社宅制度は企業の福利厚生として非常に魅力的な仕組みですが、管理が複雑であるがゆえにリスクを見落としがちです。
契約書の更新漏れや原状回復費用のトラブル、法令対応の遅れなど、小さなミスが大きな問題に発展することもあります。
こうしたリスクを回避するためには、社宅管理の適切な知識と対策が欠かせません。
今回は社宅契約において見落としがちなリスクと、その回避方法について解説していきます。
(1) よくあるリスク①|契約書関連のミス
─ 契約書の更新漏れ
─ 無断での入居者変更
(2) よくあるリスク②|諸費用の支払と取扱ルールの不備
─ 敷金・礼金の扱い不備
─ 原状回復費用が不明瞭
(3) よくあるリスク③|制度や法令対応の遅れ
─ インボイス制度の不備
─ 法定調書の未提出
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社宅契約において特に多い法的リスクの一つが契約書関連のミスです。
賃貸契約の土台となる部分なので、以下のような点にご注意ください。
2年毎に契約更新の手続きが必要です。
ところが手続きが集中する年明け~年度末の繫忙期では、更新希望の連絡を怠ったり、手続きが遅れて期日を過ぎてしまうケースが多発します。
すると賃貸借契約そのものが無効になって物件を退去せざるを得なくなったり、違約金が発生する可能性もあります。
契約期間と更新時期をしっかり管理するために、契約台帳やリマインダー機能を活用しましょう。
更新手続きを担当する部署を明確にし、役割分担を徹底することも重要です。
(関連コラム:【不動産知識】賃料値上げ要請が来たらどうする?交渉はできるのか)
異動や退職が発生した際、空いた部屋に別の社員を無断で入居させるケースです。
さらに、社員は変わらずとも同居人が増えている、あるいは同居人が変更されている、といった場合も含まれます。
これらが貸主に無断で行われると契約違反とみなされ、最悪の場合は契約解除を言い渡される可能性があります。
入居者の変更が発生する際は、必ず管理会社や貸主に報告し、承諾を得るようルール化しましょう。
定期的に契約名義人と実際の入居者の照合を行い、不備がないか確認する体制を整えることが大切です。
契約書関連トラブルのほとんどは、「条件があるなんて知らなかった」「あまり詳しく聞いていなかった」と契約時に慎重さを欠いた対応をしてしまったことが原因です。
管理会社ごとに形式の違う書類をチェックし、契約内容を確認するのは大変なことですが、後々のトラブルを避けるためにも慎重に進めていきましょう。
各手続きではかかる諸費用は"なんとなく"で進めると会社に不利益が生じてしまう恐れがあります。
何のための費用か、提示された金額は妥当なのか、ひとつひとつ注意して進めていきましょう。
契約書で「ペットを飼うなら敷金(または礼金)+1か月」など敷金積み増しの条件を明確に記載していなかった場合、解釈の違いから貸主との間で紛争が生じることも考えられます。
さらに、敷金は原則退去時に返還される費用ですが、特約があればクリーニング代と相殺する事も可能です。
ここでもし「敷金が返還されない」「預けた額より少ないのはおかしい」と疑問を持った場合、管理会社側の説明不足を理由に信頼関係に悪影響を及ぼすかもしれません。
敷金・礼金が積み増しされる条件(例:ペットを飼う、喫煙する等)や、敷金返還時の特約が無いか、契約前に管理会社へ確認をとりましょう。
また、もし敷金・礼金の支払いを社員負担としている場合は、判明したルールを社員にも共有しておくことが重要です。
退去時に発生する原状回復費用は、負担区分が曖昧だとトラブルに発展しやすい項目です。
「自然損耗であれば貸主負担」というのは周知されたルールですが、実際には自然損耗と故意・過失による損耗の判別が難しいケースもあるため、借主・貸主の間で揉める原因になっています。
また、借主負担となった際、本当に金額が適切なのか管理会社を疑ってしまったり、逆に何も指摘できず不安なまま提示額を支払うと、余計な精神的負担が溜まってしまうのではないでしょうか。
契約前に原状回復費用の負担範囲を可能な限り定めましょう。
補修費や清掃費の項目を具体的かつ透明性のある形で示すことで誤解を防ぐことができます。
できれば、入居時に物件の状態を写真やチェックリストで記録し、証拠として残しておくとより安心です。
東京都の物件であれば『賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書』もあわせてご確認ください。
(参考:以前のコラム『知って安心!『紛争防止条例』ってどんなルール?』)
法的な要求に対応できていない場合は不利益が生じたり、企業の信頼失墜に繋がる可能性があります。
大きなリスクを避けるためにも、対応漏れが無いか十分な社内チェックを行いましょう。
社宅の賃貸契約でも各種手数料など課税対象の項目があるため、登録事業者であれば適切なインボイス発行が求められます。
書式や支払金額に誤りがあると適切な控除が受けられない可能性もあるのでご注意ください。
インボイス制度に関する知識を社内で周知しましょう。
最低でも社宅関係の手続担当、経理担当、決裁者がそれぞれ知識を有していれば、万が一漏れがあった際にも誰かしらが気付き、トラブルを回避できる可能性が高まります。
また、社宅運用ルールにインボイスに関連する項目を明記することで、発行漏れを防ぐ体制を整えられます。
(参考:以前のコラム『【制度の課題】借り上げ社宅の新展開?インボイス制度の「課題」とは』)
社宅は賃料、敷金、礼金などお部屋を借りるための料金が関わってくるため『不動産の使用料等の支払調書』を提出します。
記載漏れや期限(例年1月31日)を過ぎるなどして正確な提出ができないと、ペナルティが科せられることがあるため確実に進めていきましょう。
基本的な対策ですが、法定調書の提出期限をカレンダーなどで管理することが重要です。
12月~1月にかけてはほとんどの業界が慌ただしい時期かと思いますので、うっかり失念しないようご注意ください。
内容に不安がある場合は、税理士と連携して提出を行うと安心です。
(参考:以前のコラム『社宅が関わる法定調書!「調書の書き方」と「代行会社がいる際の注意点」とは?』)
社宅契約には、見落としがちなリスクが多く存在します。これらのリスクを曖昧なままにすると企業にとって大きな負担となるので、事前に対策をとって回避しましょう。
1. 契約書のチェックを徹底する
2. 諸費用の支払いルールを明確にする
3. 法令対応を怠らない
これらの対策を実施することで、社宅運営におけるトラブルを大幅に減少させることができます。
企業全体の信頼性を高めるためにも適切な運用ルールを整備し、社員様や管理会社との信頼感益を保つことが大切です。
借り上げ社宅を適切に運用するには、地域慣習や業種特有のならわしにも注意が必要です。
特に支店の多い企業様において「一律でルールを設定したら一部でトラブルが相次いでしまった!」といったケースも見受けられるので、柔軟に対応できる体制を整えましょう。
借り上げ社宅のお悩みはぜひプレニーズへご連絡ください。
代行を検討していなくても、「制度の仕組みを教えてほしい」「退去費用が適切な額か確認してほしい」などちょっとしたご相談も大歓迎です!
皆様のご連絡お待ちしております。
株式会社プレニーズ神田店
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