社宅制度を快適に運用するためには、土台となる社宅規定を慎重に定める必要があります。
前回『「どんな部屋を借りるべき?」社宅規定の作り方~お部屋探し編~』では、お部屋探しの基準になる社宅規定の項目についてお話しさせていただきました。
今回も引き続き社宅規定を作る際の注意として、契約時の取り決めとしてよく掲げられている項目をピックアップ。
法人契約するにあたってどのような点に配慮すれば良いのか?なぜその項目を設定する必要があるのか?をご確認ください。
企業がよく設定している項目 ─ 目次 ─ |
企業がよく制限している8項目
お部屋を退去する際に管理会社へ「解約します」と連絡を入れる予告期間の設定です。ほとんどの企業が「1か月前」までで設定しています。
【理由1.】こちらは特に転勤の多い企業における人事部の都合が関わります。仮にお部屋の解約を「2か月前」までの予告とすると、人事もその日までに辞令を出さなければいけません。数か月先の人事はわかりにくいため、できるだけ短い期間で設定を行うのです。
【理由2.】解約せず更新手続きを行った後に事情が変わる事もままあります。
「更新したばかりだけど解約します」なんて事態になったとき、「既に契約更新したのだから短期解約にあたる」として違約金が発生することもあるのです。
引っ越しが必要な異動を理由とする退去は会社都合=違約金は会社の負担となることが通例なので、費用負担を削減するためにも期間を短く設定するのがよいでしょう。
貸主視点からすると、お部屋は長く借りてくれるほど嬉しいものです。
ほとんどの物件が2年契約で賃貸借されており、中には「もし短期で解約するなら違約金払ってね」と取り決める事もあります。この違約金設定が付いていてもいいのか、また付いていた場合支払いは誰が行うのか?を設定します。
企業の多くは「“1年以内解約で賃料1ヵ月分の違約金”までならOK」のようにある程度の余地を持たせています。
地域によっては短期解約違約金が必ず契約に盛り込まれているため、完全NGにするとお部屋探しが困難になってしまうのでご注意ください。
様々な事情が出てくる中で「違約金は全て会社負担」とするのか、「自己都合なら入居者負担、会社都合なら会社負担」となるのか事前に定めておきましょう。
例えば<3月31日契約満了>の物件を当日ギリギリまで住むことは少ないと思います。もし<3月10日に解約>した際に解約後の賃料(11日~31日分)は返還されるのか、それとも当月の賃料は全て支払う必要があるのか、を確認するための項目です。
一般的には日割できる物件が主流です。住んでいない期間の賃料は返還されると事前にわかっているなら引越し予定も立てやすそうですね。地域によって特色があり、西日本では月割設定されて「解約月は企業負担」とする社宅規定もまま見られます。
個人契約では口座引き落としが一般的ですが、法人契約では基本的に貸主の指定口座への振込で支払います。経理担当と相談し「何日送金なら対応できるか」を事前に確認しておきましょう。
物件が2~3件なら振込先が異なっていても対応できそうですが、100件200件と数が多い企業においては振込期日が統一されていることが望ましいです。
「現時点では数件しか利用がないし……」なんて状況でも今後社宅利用者が増えていくことが予想されるなら、今からでも設定しておくと経理担当者の負担削減になります。
もし送金作業を<25日振込>としたい場合、社宅規定では『振込期日が<25日><26日><27日><末日>の物件なら契約可』のように選択の余地を持たせて定めましょう。早めに振込する分には問題ないのですから、経理担当者は振込予定日を<25日>で統一することができます。
こうすることで送金作業の負担が減り、社員もお部屋探しの際に選べる物件が多くなります。
万が一家賃滞納があった際の取り決めをする項目です。
保証会社や連帯保証人の設定が有でも契約していいのか、その場合誰が連帯保証人となるのかを定めます。
(※保証会社、連帯保証人については以前のコラムもご参照ください 参照:『『保証会社』を利用するメリットと注意点』)
保証会社でも連帯保証人でも設定する大きな理由は同じで「家賃滞納の可能性がある」からです。
法人契約の場合は企業に対しての信用が重要になるため「この企業なら家賃滞納しないだろう」と判断されれば保証会社(連帯保証人)の設定無しとできます。
とはいえ基準は厳しく、<資本金1億円以上>を基本として<上場企業><従業員1000人以上><起業から30年以上>とある程度の規模が必要です。高い法人税を払えるならそれだけ会社に体力があり事業も安定しているだろうと判断されるため、保証会社や連帯保証人を無しにする交渉も通りやすくなります。
ただし最終的には管理会社の判断に委ねられるので、社宅規定では<保証会社/連帯保証人無し>を基本としつつ、もし必要になった場合は誰がなるか?を併記するとよいでしょう。
基本的にまず会社代表、次に入居者本人が指定されます。
会社代表を設定した場合に注意したいのが後々代表が変わった際の対処です。契約時の会社代表の名前は使用できなくなりますから、全ての契約をチェックし連帯保証人変更の手続きを取らなければいけません。件数が多いと大幅に時間をとられて手間になるためご注意ください。
管理会社や貸主からすると個人の連帯保証人よりも保証会社が付いてくれた方が安心できます。さらに言えば保証会社からすると連帯保証人がいてくれた方が安心です。
そのためよほど慎重な物件では「保証会社有り+保証会社に対する連帯保証人有り」とどちらも設定が必要になります。
この点に関してはそれぞれの立場から見たら好ましい条件が異なるため、交渉して折り合いをつけるしかありません。
お部屋の貸主の居住先が海外でも問題ないか否か決める項目です。
近年投資目的で日本の不動産を買い求める海外オーナーが増加しており、お部屋探しで遭遇する確率は上がっています。
「連絡は取りづらそうだけど……どのみち管理会社を挟むから関係ないよね」
「気にしたことなかった、どっちでもいいんじゃない?」
これから社宅導入をご検討の企業様、なんとなくOKにしようとしていませんか?ここにも意外と落とし穴が隠れています。
「非居住者や外国法人(以下「非居住者等」といいます。)から日本国内にある不動産を借り受け、日本国内で賃借料を支払う者は、法人はもちろん個人(事業者かどうかは問いません。)であっても、その支払の際20.42%の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。」(国税庁『非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき』より)
日本国内にある物件を賃借したことを理由として非居住者へ賃料を支払うと、それがオーナーの所得になるため“国内源泉所得”とみなされます。このとき借主が“源泉徴収義務者”とされ、源泉徴収をして税金を納付する必要が出てくるのです。
「原則として支払日の翌月10日までに納税すること」など決まりもあり大幅な手間になるため社宅規定では不可にしておくのがオススメです。
一定のエリア内で社宅利用希望者が複数いる場合、Aさんが住んでいた社宅から引っ越す際、Bさんから「じゃあ代わりに私が住みたいです!」と要望がくることも考えられます。
このとき、一度Aさんが解約してすぐにBさんが新規契約‥……というのは、手続きが重なる上に初期費用・退去費用が無駄にかさんで借主も貸主も手間ですよね。
契約内容に「名義は法人のまま入居者だけ変更できる」特約が入っていると、解約・新規契約の手続きを省くことができます。
この特約は入居者の入れ替えが頻繁に発生する企業にオススメです。
工場や作業系など短期で勤務している従業員が多い現場や、人材派遣・人材サービスの企業では人の入れ替えが多いため、あらかじめ入居者入替特約を付けておくと後々の手続きが楽になります。入れ替えが考えにくい企業であればこの項目は設定しなくてもよいでしょう。
なお、特約が入っている場合でも実際に入居者を入れ替える際は事前に管理会社への相談が必要なのでご注意ください。
この2点はインフラ系の中でも別途請求されることがあります。細かい部分になりますが、これらの支払いに関してもルールを決めましょう。後々のトラブルを防ぐことができます。
社宅は会社管理なので賃料・敷金などの土台部分は会社負担となりますが、入居者に紐づく費用の多くは入居者負担となります。
支払い方法は基本的に以下2パターンです。
支払方法が決まったら契約書、及び社宅利用規約に記載しましょう。
契約書の中では<水道代(入居者負担):〇〇円>のように誰が支払うのか明確にしておくと安心です。万が一滞納があった際に法人へ支払責任が発生してしまうことを防げます。
社宅担当者や経理担当者の引継ぎがあった際にも、誰の負担なのか記載があれば状況が把握しやすいです。
また、物件によって記載があったり無かったり、支払いが法人だったり入居者だったり、徴収したりしなかったり……とバラバラになれば当然現場は混乱してしまいます。一部の物件だけ法人立替をしていたら「自分は面倒な手続きをしているのに、あいつだけ!」と社員間で不満が出てしまうかもしれません。
スムーズな管理を行う事、そしてトラブルを未然に防ぐためには、こうした細かな部分についても設定を行うことが大切です。
会社の名義で契約を行えば、問題が発生した時会社に不利益が生じてしまうことも懸念されます。放置すれば甚大な被害となってしまう可能性も……。
そうならないためには想定しえる不安要素を一つ一つ潰していけば、被害を最小限に抑えることができます。
社宅規定では「どんな部屋なら借りていいのか」「どんな契約なら結んでいいのか」を明確にしましょう。基準があればお部屋探しがしやすく管理もスムーズで、社内の誰にとっても嬉しい福利厚生となってくれます!
社宅制度の土台となる社宅規定。
今回は契約時の取り決めとしてよく掲げられている項目を挙げましたが、まだまだ設定を検討するべきものはたくさんあります。
トラブルを防ぐためには、業種特有の事情や、企業様の実情、それに社宅探しをする地域の特性などを考慮し、公平かつお部屋探ししやすい規定を目指すことが大事ですが……自社内だけで決めていくのは難しいものです。
プレニーズではこうした「社宅規定の策定」に関するご相談も受け付けております。
社宅規定に関してお困り事のある企業様、不動産会社視点の意見を取り入れたいご担当者は、この機会に規定を見直しを行ってみませんか?
コンサルティングは無料ですので、気になる点がありましたらお気軽にお問い合わせください!
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