賃貸物件を借りると、家賃、管理費、敷金・礼金、更新料など様々な費用が発生します。
お部屋を借りるための費用なので社宅制度を運用する際も同様にかかりますが、それぞれの費用は誰が支払うのか事前にはっきり決めておかないと後々面倒事に発展します。
会社負担にするのか、社員負担にするのか、また双方で負担する場合その割合は?
今回のコラムでは社宅に関する様々な費用の負担例を挙げました。ぜひ参考ください。
── 目次 ──
◇“負担者の考え方”とは?
─(1)『賃料』の負担割合
─(2)『管理費(共益費)』
─(3)『敷金』『礼金』
─(4)『仲介手数料』
─(5)『更新料』
─(6)『短期解約違約金』
─(7)『原状回復費用』
─(8)『鍵交換費』『消臭費用』
─(9)『火災保険料』
─(10)『24時間サポート契約費用』
─(11)『水道・光熱費』『インターネット代』『町会費』
◇規約を定める際の注意点
◇まとめ
賃貸物件を借りる際に発生する様々な費用は、大きく
A.どの物件でも必ず発生する項目 B.物件ごとにあったり無かったりする項目 |
の2種類に分けられます。
社宅は会社名義で契約し社員のための福利厚生として機能していますから、「契約上必ずかかる費用に関しては会社負担にする」という考え方を採用している企業が多いです。
上記で言えばA.の項目に関しては基本的に会社負担、それ以外は個人負担と定められています。
では具体的にどんな項目があるでしょうか?一つずつみていきましょう。
まずは基本の項目『賃料』。
必ず発生する費用ですが、全額会社負担にするとその費用は社員への「給与」とみなされてしまいます。
そのため会社:社員で負担割合を決める必要がありますが、
会社負担:社員負担=8:2
のように極端に多い割合で設定した場合も同様に「給与」とみなされる場合があるので気を付けましょう。
<会社視点> 給与として支払う=経費として落とせる(メリット) |
<社員視点> 給与として受け取る=所得が増えるので所得税の支払いが増えてしまう(デメリット) |
このように社員にとって不満が残る形です。
おおまかな決め方ですと
<賃料上限〇〇円、その内××%を会社負担、残りを社員負担>
このような決め方が多く採用されています。
例:社宅規定で<賃料上限10万円、その内50%を会社負担、残りを社員負担>と定められている場合 |
(物件A)賃料80,000円
会社負担 → 80,000×50%=40,000円
社員負担 → 80,000-40,000=40,000円
(物件B)賃料120,000円
会社負担 → 100,000×50%=50,000円
社員負担 → 120,000-50,000=70,000円
会社が負担するのは上限以内の賃料50%までなので、物件Bのように上限を超えた場合は個人負担が多くなります。
※実際にはこの他にも細かな計算方法があるので、あくまで大まかな一例としてご参考ください
『賃料』のようなネックとなる事項が無いため、全額会社負担/全額社員負担/一部社員負担と設定が分かれます。
必ず発生する費用なのでやはり会社負担としている企業が多いです。
物件によっては
賃料80,000円 + 管理費5,000円
賃料85,000円 + 管理費0円
と表記が異なるため、(1)『賃料』の規定を「賃料+管理費」で設定する場合もあります。賃料はクリアしたけど管理費がオーバーしている、といったことが起こらなくなるのでお部屋探し時もわかりやすいですね。
一般的に全額会社負担です。
首都圏であれば賃料の0~2か月分が基本なので、多くの社宅規定で<上限2か月分まで>と設定されています。
例外は「通常1ヵ月分だが喫煙したら2ヵ月分」のように入居者の都合で費用が追加される場合です。
「本来は1ヵ月分で済んだのだから」という考えから、入居者都合で追加された費用に関しては社員負担と定めることができます。
全額会社負担にしている企業がほとんどです。
(3)の『敷金』『礼金』とセットにされることが多く、この3点は特に“不動産賃貸借で必ず発生する費用”と言われています。
余談ですが、個人契約で賃貸物件を探す際は仲介手数料無しの物件を優先する方がいます。
社宅規定で<仲介手数料は会社負担>と定められていたら手数料有無を気にせずに済んで物件の選択肢が広がるため、会社負担で設定されているととくに喜ばれる項目です。
全額会社負担とする会社が圧倒的に多いです。
『更新料』も〇ヵ月分という単位で設定されていることが多いので、『敷金』『礼金』と同じように<上限1ヵ月分>と規定されます。
ちなみに更新の際には“更新事務手数料”も別にかかります。
こちらも更新料とまとめて会社負担とするところが多いです。
基本的に会社負担ですが「1年以内の解約なら1ヵ月分まで負担」のように線を引いています。
もし規定額を超える費用が発生した場合は社員負担です。
ここで注意したいのが解約の理由です。
なぜ短期解約することになったのかをはっきりさせ、会社都合で仕方なく解約する場合は全額会社負担にすると定めているところもあります。
いずれにしても企業ごとの判断に委ねられるので、何か月分までを会社負担とするのか、規定額を超えた分はどう判断するか?まであらかじめ決めておきましょう。
全額会社負担とする企業が多いです。
一般的な賃貸物件でも同じことが言えるのですが、壁紙の日焼けや机・棚を置いた事のへこみなど通常生活する上で発生した損耗・損傷については入居者に責任は無いものとされています。
ただし以下のような場合は善管注意義務違反となり通常よりも原状回復費用が高くなります。
退去時に揉めないように、規定額を超えた分も会社負担とするのか、それとも社員責任として請求するのか定めておきましょう。
原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。
そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
参照:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』
いずれも全額会社負担か全額社員負担のどちらかになりますが、会社負担とすることが多いです。
もしも鍵を交換せず前の入居者と同じ鍵を使い続けたらどうなるでしょう?
合鍵が作成されている可能性を残し、住居への不法侵入を許してしまいます。
消臭費用はお部屋を綺麗に保つために必要な費用です。
これらは社員に安心して住んでもらう環境を整えるのは会社の役目、という考えから多くの企業が会社負担としています。
今までは「賃貸契約で必ず付随するものだから」という考えから法人負担が主流でしたが、近年は「室内の補償は個人に関わるものだから」と個人負担(契約手続きも社員任せ)にする企業が増えています。
どちらで設定するかは半々といったところですが、いずれも負担者となった側の全額支払いです。
なお火災保険はその名称から「火事やボヤの補償のみ」という印象がありますが、実際は
など室内での損害が手広く補償されています。
火災保険に入らず火事や水濡れを起こせば数十万~数千万の損害が発生することもあるので、貸主としては「加入してくれないと安心して貸せない!」のが本音です。
そのため万が一の備えとしてほとんどの賃貸借物件では火災保険の加入が必須になっています。
個人負担とした場合「だったら加入は自分の勝手だよね?」と手続きを怠る人もいるので認識の齟齬が無いようにしましょう。
7割程度の企業では社員負担と定められています。
お部屋の契約時に加入を勧められるのですが、火災保険と違って任意であることが多いため「必須条件ではない=会社負担にはならない」という考えです。
しかしなかには24時間サポート加入必須の物件も当然ながら存在します。
もし入居者が「支払い費用はできるだけ抑えたい!」という考えならばこういったお部屋は避けたいはずなので、加入任意のお部屋を探すよう伝えておきましょう。
これらは基本的に全額個人負担です。
お部屋の契約に伴って発生した費用と異なり、電気やガスの使用は「そこで生活していくなかで発生していく費用」と考えられます。
どの電気会社・ガス会社と契約するのかも社員に任せていることがほとんどです。
町会費についてはそもそも設定されている物件が少なく支払いも任意なことがあるため、(10)と同じく「必須条件ではない=会社負担にはならない」という考えです。
会社負担or個人負担が決まったら以下の点にも注意しましょう。
どの項目は誰が支払うのか、契約書及び社宅利用規約に盛り込み明文化しましょう。
もし契約書に「どちらが支払う」旨の記載が無く社員も支払いを拒否した場合、管理会社は法人名義であることを理由に法人に対して請求してきます。
会社負担分は会社が支払い手続き、社員負担分は社員が支払い手続き、が基本です。
しかし個人に任せると「振込し忘れた!」なんて方が出てくることも珍しくありません。
管理会社からしてみてもバラバラに何件も振り込まれるより一か所からまとめて支払いされる方がわかりやすいという思いもあります。
解決策として社宅規約上は個人負担としつつ、支払い方法は「一旦法人が立替えてまとめて支払い、後に社員の給料から天引き」の方法をとる企業もいます。
経理担当が手続きした方が確実に支払いが行えますし、社員としても自分で手続きする手間が省けるので法人・社員・管理会社どの立場から見ても安心です。
認識のズレが無いよう利用開始前の説明を社員へ十分に行った上で、社員負担の費用について了承を得ましょう。
そして案内が完了したら必ず内容を了承した旨の同意書をとるようにしてください。
言った/言わないのトラブルが発生した際の切り札になります。
今回ご紹介した内容も言ってしまえばルールではないので、どちらの負担にするかは最終的に企業ごとの判断に委ねられます。
時代のニーズやお部屋探しを行う地域の特色で変化していくこともあるので「必ず○○負担!例外は認めない!」なんてこともありません。
「この負担割合で大丈夫?」「他にも規定に入れたい項目があるけどどうしたらいい?」など迷っていることがありましたらご相談ください。
プレニーズの担当者が費用の負担割合の考え方や法人様ごとの懸念事項についてプロの目線からアドバイスさせていただきます。
コンサルティングは無料ですので、気になる点がありましたらお気軽にお問い合わせください!
株式会社プレニーズ神田店
営業時間 09:30-18:30(土日・祝日を除く)
TEL 03-6384-0415 FAX 03-6384-0416
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