2027年4月から、日本では新リース会計基準の適用が予定されています。
会計制度の改正というと経理部門の領域として捉えられがちですが、借り上げ社宅制度を運用している企業様にとっても無関係ではありません。
借り上げ社宅は、企業様が社員様の住居として不動産賃貸契約を締結し、福利厚生として提供する仕組みです。言い換えると、企業様が複数の賃貸借契約を管理している状態ともいえます。今回の新リース会計基準では、このような賃貸借契約の扱い方に変化が生じる可能性があるため、総務・人事・福利厚生担当者様にとっても、あらかじめ整理しておきたいテーマです。
新リース会計基準の基本的な考え方を押さえながら、借り上げ社宅との関係、実務上の注意点、そして社宅代行会社が関われる範囲について整理していきましょう。

今回の新リース会計基準は、国際会計基準であるIFRS16の考え方に近づけた制度とされています。
IFRS16では、それまで区分されていたファイナンスリースとオペレーティングリースの考え方を借り手側では大きく見直し、多くのリース契約を「使用権資産」と「リース負債」として計上する仕組みが採用されています。
これは、形式上は賃貸借契約であっても、企業が一定期間にわたって資産を使用している以上、実質的には資産の利用と負債の発生があると捉える考え方です。
すでにIFRSを採用している企業様では、オフィスや店舗などの不動産賃貸契約についてもこうした処理が行われているかと思います。今回の日本での制度改正は、こうした国際的な流れに合わせたものと解釈できるでしょう。
では、借り上げ社宅は新リース会計基準の中でどのように扱われるのでしょうか。
これまで一般的な借り上げ社宅契約は、
上記の観点から、従来はオペレーティングリースに近い性質と整理されてきました。
しかし新リース会計基準では、こうした賃貸借契約についてもリースとして認識するかどうかを検討する必要が生じる可能性があります。
一方で、実務上は短期リース(概ね1年以内)や少額資産リースといった例外規定も存在します。借り上げ社宅は契約形態や期間が物件ごとに異なるため、これらの適用可否については個別に整理が必要となるケースも想定されます。最終的な会計処理については、企業様の経理部門および監査法人との協議に委ねられる点が大きいといえるでしょう。
借り上げ社宅制度を運用する企業様においては、会計対応以前に、契約管理に関する課題が顕在化するケースが少なくありません。
具体的には、
といった状況です。
特に社宅数が増加すると契約情報の把握が難しくなり、「正確な契約数や条件を即時に把握できない」という状態に陥ることもあります。新リース会計基準では契約情報をもとに判断が行われる場面が想定されるため、こうした管理のばらつきは実務上の負担となる可能性があります。
その意味では、今回の制度改正は、社宅契約の管理体制を見直す契機とも捉えることができます。

リース該当性の判断や具体的な会計処理については、企業様の経理部門および監査法人の判断領域となります。そのため、社宅代行会社がこれらに直接関与することは基本的にはありません。「新リース会計基準に関する支援」という視点でみると、できることは土台のサポートに留まります。
実務面においては次のような支援が可能です。
(1)社宅契約の一覧化
(2)契約期間・更新条件の整理
(3)契約データの一元管理
(4)社宅数・契約状況の可視化
社宅代行会社は制度対応そのものを行うのではなく、その前提となる契約管理基盤を整えるパートナーとしての立ち位置でサポートを行うことになります。なお、これらの整備は新リース会計基準への対応だけでなく日常的な社宅運用の効率化にも直結します。代行会社を入れている/いないに関わらず、今回の制度適用を機会に見直しを行うのがオススメです。
新リース会計基準は"会計処理の変更"という側面が強調されがちですが、借り上げ社宅を運用する企業様にとっては、社宅制度全体を見直す契機ともなり得ます。
社宅ご担当者様の実務においてまず重要となるのは、個別の会計判断に入る前に、
といった基礎情報を正確に把握できているかどうかです。これらが整理されていない状態では、制度対応においても判断や対応に時間を要する可能性があります。
新しい会計基準の適用は理解するにも処理するにも負担ではありますが……視点を変えると、社宅制度の運用を整理し、より効率的な管理体制へ移行する良い機会ができた、ともいえます。
自社の社宅制度の現状を踏まえながら、今後の安定的な制度運用に繋げていきましょう。
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