その転勤制度、運用し続けて大丈夫?

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その転勤制度、運用し続けて大丈夫?

皆さんがお勤めしている会社では、転勤や部署異動はあるでしょうか?
「あるにはあるけど稀だな」「年に一度必ず行われる」など企業によって頻度は様々ですが、ごくごく小規模な企業でない限りどの業種でもある程度行われていることと思います。

しかし、転勤制度はあって当然!社員はそれに従うしかない──という考えは今は古いもの。もし古い体制のまま運用し続けていたら、いずれは会社全体の業務が回らなくなってしまうかもしれません。
今回は変化しつつある現代の『転勤制度』の事情についてお伝えします。

どうして転勤は存在するの?

大前提として、転勤は会社のためでもあり、社員のためにも行われます。

それは以前のコラム『人事異動は誰のため?』でもお伝えしたような業務のマンネリ化を防ぐことを目的としたり、新しい支所でスキルを上げてほしい、あるいは営業成績が評価されて「別支店の売上に貢献してほしい」と会社からの期待がある場合など様々です。

業務量で転勤が発生するパターン

社内のある部署について、部署の従業員数と業務量のバランスがとれていると仮定しましょう。
ここに新しい業務が増えると、人員に対して業務の量が多くなってしまい1人1人の負担が大きくなってしまいます。

このようにバランスのとれていない部署は早急に対処する必要があります。そこで人事のとる手段は大まかに2つ。

1つは業務量を減らすこと。
他の部署に業務を回したり、外部企業に委託したり、ツールを導入して効率的に業務を回せるようにするなどの対処方法です。

もう1つは人員を増やすこと。
別の部署から社員を動かしたり、新しく人を採用するなどして業務量にあった人数を揃えます。

転勤は人が動くので後者の対応です。

どれくらい発生するもの?

転勤は勤務先が変わるものなので、そもそも事業所がいくつかある企業でないと行われません。
そのため中小企業よりも大企業で行われやすい傾向です。
頻度は企業により異なりますが、従業員数も多く事業所の数も多い企業であれば「毎年4月」「2年毎に必ず」のように定期的に転勤は発生しています。

 

転勤を行う上で人事が意識するべきこと

ところで「転勤をする意味」とは何でしょうか?

人事部としては「社内のバランスを保つために必要な人員配置を行っている」「業務のマンネリ化を防ぐ」「社員自身のスキルアップため」という意識ですが、実際のところ当の社員と気持ちを共有できていない場合の方が多いことと思います。

前向きになるために必要なのは“理由”

そもそも転勤に前向きな人は少ないので、やれスキルアップだキャリア育成だ社会人としての成長だ……とだけ言われても未来のイメージが湧かずモチベーションは上がりづらいです。

しかし人事部としても「あなたの転勤にはこういう意図があるんですよ」といった明確な理由を提示できる人はあまり多くいません。

社員「スキルアップのためって言うけど、具体的にどう変われるんですか?」
人事「それは自分で頑張ってください。新しい環境なら良い気づきも生まれますよ!」
社員「わかりました……(結局こっちに丸投げじゃん!やる意味あるのかな……)」

結果として転勤者に上手く訴求することができず、転勤者は特段メリットを感じられないまま「今の部署で何かやらかしたかな……」「引っ越しも面倒だな……」「新しいところで上手くやっていける自信が無い……」とマイナス面にばかり目がいってしまいます。

こうして不満がたまっていき、「いやいや転勤するくらいなら転職するか」と離職を選ぶ人も出てきてしまうのです。

「とりあえず動かそう」ではだめ!

2006年に『若者はなぜ3年で辞めるのか』が発売され、当時の世情を上手く取り入れたタイトルは話題になりました。
しかしいまや3年以内で辞めることなど珍しくもなく、20代で3年か5年も同じ会社に居たら長い方ではないでしょうか。

現代では転職することは当たり前。
そのため転勤や部署異動で自分の希望ではない業務を任されることになれば、それがきっかけで離職を選択されてしまうのも珍しいことではありません。

「きみ、来月から転勤になったからよろしく」
「はい……(嫌だけど仕方ない)」

こんなやりとりがまかり通るのは昔のこと。間違っても「会社のほうが立場が上だから受け入れろ!」などどいう時代ではありません

世の中に会社はごまんとある

永久就職がまかり通っていた時代は“同じ会社で仕事内容(スキル)を変える”ことが広く受け入れられていました。
今は逆に“スキルを持って会社を変える”ことが普通です。

例えば営業スキルでもデータの処理能力でも、社員が何かしらの専門知識や評価される能力を持っていれば他に入社できる会社はいくらでもあります。
社員の待遇や仕事環境に対して気遣うことをしなければ、もっと良い職場を求めて簡単に人は離れていってしまいます。

人事が目指すべきもの

しかし社員に不満を持たれやすいからといって、「じゃあ転勤を無くそう!」なんて極端な事はどの企業でもまだまだ難しいでしょう。
会社としては転勤を行いたい、その際できるだけ社員に不満を持たれたくない……両立させるには何ができるでしょうか?

①押し付けではなく“折り合い”を付けよう

会社都合ばかりを取り入れた内容では当然社員の不満が発生しやすくなるため、本人の希望もできるだけ取り入れることが大事です。

人事から見た「各部署の業務内容や量」と「社員が持っているスキル」を照らし合わせたうえで、さらに「本人が希望している業務内容」を考慮していきましょう。
事前に面談を行っておくと希望する(あるいは希望しない)業務や地域を知ることができるので、実際に転勤が確定した際に不満は発生しにくいです。

②今よりも“将来”を見よう

人員配置を考える際に行いたいのが、これからどうなるかを予測すること。
「いままさに人手が足りておらず残業続きの部署がある」ような緊急性が高い場合は別として、各部署の将来を予測して先回りできると長期的に安定した体制を保てます

これから1年後、3年後、売り上げはどうなっているか?
家族構成の変化で勤務内容を変えそうな社員はいないか?
昇格・降格で引継ぎが必要になることはないか?

小さなことから大きなことまで、社内では日々様々な変化が発生しています。

こうした変化が発生する前にいち早く気づき、先手で対策をとっていけることが大事です。
将来を予測することができるようになれば、人事部としてもスキルアップできます。

③明確な“理由”を持とう

かつては人事部や上層部の独断でも会社は回っていましたが、変化した時代の中でそのやり方は通用しません。
今後はもっと社員が納得できるような「なぜこの転勤・異動が必要なのか?」を説明する論理的な答えが必要です。

何度か書いてきた「スキルアップのため」という理由も、具体的にどんなスキルが上がるのか、そのスキルが上がることでどんなメリットがあるのか?を提示する必要があります。

例えば

  • 「地域が変わると営業のアプローチ方法も変わる。いろんなやり方を模索する思考力を養ってほしい」
  • 「○○の資格が異動先の支所で必要だ。リーダーになって支所の皆を指導してほしい」
  • 「3年で成績を伸ばせたら課長に昇格できる。チャレンジしてみないか?」

などなど。
転勤は会社が上手く回っていくための措置ですが、最も影響を受けるのは転勤する社員です
「社員個人にとってどんな良いことがあるか」一人一人のメリットを考えましょう。

④それでも不満を持たれそうなところは“事前対策”!

人事部がいかに工夫しようとも、気持ちの面で「嫌なものは嫌!」と思われていてはどうしようもありません。
その他の面で会社としてできることとしては、転勤に関する補助を手厚くすることです。

引越しを伴う転勤の場合は部屋探しを会社が代わりに行ったり、引っ越し代を支給するといった対策がとられます。
住居は必ず必要になる物なので、借上げ社宅や住宅補助などの福利厚生を用意することも有効です。

できるだけ社員の負担を減らすことで、まずは転勤に対する「面倒だなぁ」という気持ちを軽減させましょう。
手厚い保障があれば「社員の事を考えてくれてる会社だな」と思ってもらえて、転勤に影響がない他の社員からの印象もよくなります

これからの転勤制度

会社には業務があって、業務をこなすには社員が必要です。
人事部としては、まず社員のことをただの“業務を片付けるための頭数”ではなく“一人一人の人間”であることを理解することが大切。

個性を重視する時代なので、今はなんとなく会社に入るのではなく「自分はこれができる」と意識し、「自分に合った会社を見つけたい」と考える人が増えています。

魅力が無い会社からは社員が離れていき、いつか業務が回らなくなります
そのためにはやはり社員の要望に耳を傾ける姿勢が大切です。

変化していく時代、新しい体制を

長く働いてもらうには採用時点で「転勤を受け入れられるか」「転勤無しで働くか」のいずれかを選択できるようになることが望ましいでしょう。
おそらく転勤無しを選択する方が多くなりそうですが、それも時代の変化と受け入れましょう。

転勤や部署異動だけが人事の全てではありません。
業務が回らない部分はツールや外部サービスを導入して処理の効率を上げたり、アウトソーシングすることも対策の一つです。

時代が流れて主流も変化している現代。
今までのやり方を見直して少しだけやり方を変えてみると、意外とすんなり新しい体制が築けるかもしれません。

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