働き方が見直されテレワークが推進されている昨今、「この1年はほとんど事務所に行ってないや」という方もいたのではないでしょうか。
毎日早起きして、満員電車に乗って、事務所で仕事をして、外回りに出かけて、定時になったら帰路について、電車に乗って……そんな毎日を当たり前に過ごしていた頃と比べたら、通勤にかける時間が無くなるというだけでもずいぶん生活に余裕ができますよね。
コロナ禍の影響でさらに浸透されるようになったテレワーク。
この制度が進むにつれて街ではある変化が起きていました。
「出社する社員が少ないなら、もっと事務所を小さくしていいだろう」
と、現在の大きなオフィスを解約してコンパクトなオフィスに移る企業が増えているのです。
企業が存在すればオフィスがあるのが一般的。
ですが、出社する社員がいないのならオフィスの存在も絶対必要というわけではなくなってきます。
企業も人も特に集まっている東京都心5区でも、やはり状況は変わりません。
オフィス仲介大手である「三鬼商事」の調査によると、東京都心5区の2021年7月空室率は既存と新築のビルの平均で6.28%(前月比0.09ポイント上昇)。
供給過剰の目安といわれる5%を超えており、2014年6月の6.45%以来となる7年1カ月ぶりの高水準です。
そして空室率の上昇は17か月連続。近年では異例の状況となっています。
区別で状況を見ても
と、4区が目安の5%を超える結果に。唯一下回った千代田区でも4.54%とあまり余裕があるとは言えない数値です。
不要なものを切り詰めて経費削減するのは会社経営の基本ですが、「いくらなんでもオフィスを削減するなんて!」と抵抗も大きいと思います。
しかしテレワークが増えて出社する社員が減ると、がらんとした空間にポツポツ人がいるだけになってしまうことも……。するとどんなに立派なオフィスでも、その空間も、そこにかけるお金も無駄になってしまいます。
では今のオフィスを解約することで、具体的にどんなメリットが生まれてくるのでしょうか?
ほとんどの企業は自社ビルではなく賃貸事務所を借りて運営しています。
当然広いほど賃料が高くなるので、規模に合ったオフィスを借りないと賃料はほとんど無駄となります。
特に都心の事務所は家賃が高く、企業の負担になりがち。
交通の便や周辺企業へ来訪する頻度を考慮して都心を選んだとしても、社員のいないがらんとしたフロアに高いお金を払うことはないでしょう。
賃料は毎月必ずかかる固定費なので、できるだけ抑えるのがベスト。
仮に100人で作業できる広さに20人程度しか出社していない状況が続いているのなら、規模の縮小を検討するいい機会かもしれません。
オフィスの中にはパーテーションやデスク、パソコンやロッカーなど様々なものが存在しています。
広さがあれば必要な仕切りも増え、空間デザインを考えなければいけません。
会議室や休憩スペースなどの確保に合わせて備品も多種用意する必要が出てきます。
コンパクト事務所なら必要な仕切りも少なく、内容によっては社内の人間だけで取り付けができるので外部発注する費用を削減できます。
広さに合わせて備品も減らせるので、用意するものが抑えられることがメリットです。
オフィスを使用していくにあたって、気にするのは賃料だけではありません。
電話回線の用意、水道代や電気代、LAN回線やWi-Fiの設置……と、インフラ関係の充実も大切です。
当然使用する人数が多ければそれにかかる費用も増えていくため、大きなオフィスであるほど負担も大きくなっていきます。
コンパクト事務所にすれば電話回線は最低限の数で済むし、水道や電気も少人数で使用するので節約が可能です。
大きな企業では複数の支店があるにも関わらず、それぞれで空室が目立っている場合もあるでしょう。
それならいっそのこと一つにまとめてしまえば賃料や電気代も1支店分で済み、運営にかける費用を削減できます。
1店にまとまれば売り上げや手続きの管理もしやすくなるため、業務がスムーズに回ることが期待されます。
ここまでは経費削減できるメリットを上げてきましたが、やはり節約できるといっても、「すぐにオフィスを変えよう!」というのは難しいものです。
ここからは注意事項を確認してみましょう。
いざコンパクトオフィスに解約・移転が決まったとしても、
……などなど、支払いが発生するタイミングは出てきます。
「節約するために高額な支払いをしなければいけなくなった!」なんて本末転倒にならないように、オフィスを変えたらどのくらい節約できるのか?変えた場合いくら必要になるのか?を事前に計算しておきましょう。
会社の登記を変更したり、関係各所に案内を出したり、協会や団体に所属している場合は漏れなく連絡をするなど、事務手続きが必要です。
手続きを忘れてしまうと業務に支障が出かねません。
誰がどの手続きをいつまでに行うのかを決め、慎重に対応していくことが求められます。
社員が交通の便で会社を選んでいる場合、移転先によっては「通いづらくなるから」と退職を希望するかもしれません。
「今のビルから隣のビルに移った」というくらいなら変化は少ないですが、5駅先になった、最寄り駅の路線が変わった、県をまたいだ、というレベルだと可能性が高くなってきます。
退職を防ぐためには
といった対策をとりましょう。
一般的に賃貸事務所物件の解約予告は、契約満了の6か月前となっています。
そのため唐突に「解約決めた!1か月以内にすぐ出よう」と決定されても、すんなりと解約はできません。
違約金が発生したり残りの賃料を一括で支払うなどの対応が求められることがありますので、どのような契約内容だったかを先に確認しておくと安心です。
また、「じゃあ6か月後に退去でいいか」と決めた場合でも、数ヶ月経てばまた状況が変わっていることもあるでしょう。
今までテレワークをしていた社員達が皆通常出社に切り替えれば、コンパクトオフィスでは人員を持て余してしまいます。
といった点も考慮して慎重に判断する必要があります。
一時に比べ落ち着いてはいますが、オフィスを解約する企業は未だ緩やかに上昇を続けています。
「事務所よりも自宅で仕事を。高い賃料を払うよりも最低限の広さがあればいい」
そんな考えを持つ企業が徐々に増えて、社会全体に変化がもたらされているように感じます。
これまでの働き方が変わるのに抵抗を覚えてしまうこともありますが、今が会社の在り方を見直すいい機会なのかもしれません。
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